引越しの見積もりを取る前に

なぜ複数の引越し業者から相見積もりを取るのか

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引越しの見積もりを取るのに、なぜ、複数の引越し業者から見積もりを取る相見積もりでなければならないのでしょうか。

引越し料金には定価がないので、それぞれ値引きを競わせるために複数の引越し業者から見積もりを取るべきだと考えるユーザーも多いでしょう。

もちろん、相見積もりは複数の引越し業者に料金面で競わせる目的もあります。

しかし、こと引越しにおいて相見積もりは引越し料金だけを比べるために限ったことではないのです。

複数の引越し業者から見積もりを取る意味を考えます。

引越し料金はどんな場合でも必ず引越し業者が決める

引越しの見積もりの場でユーザーが引越し料金を決めることはできません。

引越し料金は必ず、その引越しを請け負う引越し業者が決めます。

見積もりの場で「この引越しを5万円でお願いします」とユーザーが言ったとしても、その引越しをユーザーが要望したとおりの5万円で引き受けるかどうかは引越し業者が決めます。

どのような引越しでも、いくらで引き受けるかは引越し業者の腹積もりひとつなのです。

訪問見積もりの場で、引越しの合計金額から値引きして欲しいとユーザーが訴えても、値引きするかしないかを決めるのは引越し業者です。

よくいるのが「その見積もりは高い」とか「いやいや本当はもっと安いでしょ」と詰め寄ってくるユーザーです。

ユーザーは引越し料金を上げ下げすることはできない

ユーザーがどれだけ詰め寄っても引越し業者が大幅に引越し料金を安くすることはありません。

引越し業者が出す引越しの見積もり金額は、ユーザーの思惑や計算、予算など関係ないのです。

ユーザーが「思っていた金額と違う」と引越し業者に詰め寄った場合、引越し業者は「どうぞご検討ください」と見積書を置いて帰ってしまうでしょう。

引越し業者が出した見積もりは「この金額でなら引き受けてもいい」という見積もりであり、「これ以下では引き受けない」という意味を含んでいるのです。

ユーザーが引越し料金を自分で選択したと勘違いしてしまうこともある

引越しの見積もりでは荷造り付きのラクラクパック、ユーザーが荷造りする節約コースなど、様々なコースの中から選択できるようになっています。

他にも引越しサービスにはエアコンの付け外しや不用品処分、テレビの配線、洗濯機の設置など、様々なオプションサービスの中から、必要なオプションをユーザーが選択できるようになっています。

ここでも注意が必要です。

確かにオプションサービスを選択したのはユーザーですが、そのオプションサービスを追加することによって増加する引越し料金は引越し業者が決めています。

つまり、引越しにかかる料金、引越しのオプションサービスにかかる料金についても、引越しにまつわる料金のどの部分においてもユーザーが金額を決めることはできないのです。

引越しの見積もりでユーザーが唯一持っているのは「引越し業者を決める権利」

引越し料金を決めるのは引越し業者だとしましたが、では、引越しをするユーザーには何を決める権利があるのでしょうか。

訪問見積もりの場では、引越し料金はまるでレジに商品を通すように引越し業者の営業マンが機械的に電卓で弾いていくだけです。

上に述べたように、引越し業者がはじき出した見積もり金額を上下させる権利はユーザーにはありません。

このままでは、目の前の引越し業者の「言い値」で引越しをすることになります。

ユーザーに引越し料金の見積もり額を上下させる権利は無い

他の引越し業者にサービスを依頼することができるようにしておくための相見積もり

引越しの見積もりという場面で、ユーザーは唯一、引越し業者を決める権利を有しています。

ユーザーには引越し業者が弾き出した見積もり金額を上下させる権利はありませんが、今、目の前にいる引越し業者に頼むか頼まないかを選択する権利を有しているのです。

この選択肢の中には「引越し自体をするか、しないか」も含まれます。

そして、後に必ず引越しをするのであれば、ユーザーは「他の引越し業者に依頼する」という選択肢も有しています。

もし、引越し業者の見積もりを1社しか取らなければ、「他の引越し業者に依頼する」という選択肢を放棄したことになります。

つまり、他の引越し業者の見積もりを取らなければ、ユーザーは選択肢が何もない常態になり、目の前の引越し業者がはじき出した見積もり金額どおりに引越しをしなければならなくなるのです。

相見積もりを取るということは、ユーザーが持っている唯一の権利、引越し業者を選択する権利を得るということなのです。

相見積もりを避けるために即決を迫る引越し業者が多い

引越し業者も数多くありますから、どのユーザーの見積もりも他社との相見積もりになることは引越し業者も想定しています。

引越し業者からしてみれば、他社との相見積もりになることは一つとしてメリットはありません。

そこで、引越し業者は他社の見積もりを断って、今、当社に決めてくれたらこの料金でいいですよという即決価格を提示して相見積もりになるのを避けようとするのです。

引越し業者を選ぶ権利を放棄してしまうユーザーが多い

オプションや引越しのコースを選んだだけで納得し、他の引越し業者から見積もりを取らないユーザーは意外なほどたくさんいます。

初めにやってきた引越し業者の訪問見積もりの場で即決してしまうのです。

たった一社の引越し業者から見積もりを取っただけで引越しを依頼したとしても、ユーザーが引越し後に後悔したりすることはありません。

ユーザーはその一社の引越し業者の見積もりに納得してサービスを依頼するわけですから、「自分でこの引越し業者を選んだ」という感覚を信じているからです。

しかし、引越しの見積もりにはその先があって、別の引越し業者からも見積もりを取っていれば、まったく違うストーリーが待っているかもしれないのです。

別の引越し業者を選ぶ権利を持つためには、別の引越し業者からも見積もりを取るしかありません。

引越し業者を選択する権利を得るには、面倒でも複数社の引越し業者から引越しの相見積もりを取る必要があるのです。

引越しを引き受けてくれる引越し業者が1社しかない場合

「他の引越し業者に依頼する」という選択肢が無い状態は、なにもユーザーが複数の引越し業者から相見積もりを取らなかった場合のみではありません。

引越しの繁忙期にほとんどの引越し業者のトラックが埋まってしまった場合の見積もりや、引越し希望日にかなり近づいてからの見積もりの時にも同じように「他の引越し業者に依頼する」という選択肢が無い状態に陥ります。

これはユーザーの意思に関係なく、たくさんの引越し業者に電話しても「トラックの空きが無い」と断られた末、「やっと引き受けてくれる引越し業者が1社見つかった」という状態になった場合のことです。

まさにその引越しを請け負える引越し業者が1社しかない状態です。

他社から見積もりを取れない状態では引越し料金は引越し業者の言い値になってしまう

そのユーザーの引越しを一社の引越し業者しか請け負えない状態になったときの引越し料金が通常の引越し料金よりも割高なことは容易に想像がつくはずです。

納得のいく引越し料金やサービス内容ではない場合もあるでしょう。

しかし、不動産の契約上、今の住まいは明け渡さなければなりません。

他の引越し業者という選択肢がない場合、この引越しを引き受けてくれるという目の前の引越し業者にすがるしかなくなるのです。

たとえそれがどんなに悪条件でもです。

引越し業者1社からしか見積もりを取らないということは、引越しを引き受けてくれる引越し業者が1社しかない状態と同じことなのです。

他に引越し業者を見つけない限り、引き受けてくれるという目の前の引越し業者にすがるしかない状態に