引越しの見積もりを取る前に

引越しの見積もりの実状 | 引越し業者から見た引越しの見積もり

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筆者は引越し業者での営業経験があります。

引越し業者の営業マンは闇雲な飛び込み営業や、テレフォンアポイントなどは一切しません。

引越し業者の営業は完全反響営業です。

引越し業者の営業マンはユーザーから引越しの見積もりを依頼されて初めて、営業の仕事に出かけるのです。

引越し業者にとっての引越しの見積もりとは

引越し業者の営業は完全反響営業です。

反響営業とは営業手法の一種で様々な方法で打たれた広告に反応、反響を寄せた消費者に対してのみ売り込みをかける方法のことです。

反響営業は見込みの高い顧客のみに絞り込んで営業することができます。

まず広告を打ち関心のあるユーザーの反響を待つのです。

簡単に言うと、呼ばれて伺うスタイルが引越し業者の営業です。

例えば、普通に生活しているユーザーに対して飛び込みやテレフォンアポイントで「今から引っ越しませんか?」と営業をかけたところで箸にも棒にもかからないでしょう。

ですから、引越し業者はインターネット、チラシ、TVCMなどの広告を打ってひたすら引越しの見積もり依頼があるのを待っています。

そんな中で引越しの訪問見積もりは、引越し業者が営業を掛けることができる唯一の場と言えます。

その営業を掛けることができる唯一の場、訪問見積もりに引越し業者の営業マンは自社のパンフレットを片手に決死の覚悟で挑んでいるのです。

引越しの営業は完全反響営業

引越し業者は完全反響営業なので営業マンの成績は決定率と決定件数

引越し業者の営業はまず、ユーザーから引越し業者に見積もりの申し込みがあり、その見積もりの申込を数名いる各営業マンに振り分ける形になります。

引越し業者の営業マンに見積もりを依頼された時点では、各ユーザーの引越しの規模は分かりません。

ですから、引越し業者の営業マン個人の成績を引越し料金の売り上げ合計で比べることは出来ません。

営業に行く件数が多ければ売り上げが大きくなるのは当然なのですが、10件の見積もりに行って5件の引っ越しを決め10万円の売り上げを上げた営業マンと、5件の見積もりに行って5件の引っ越しを決め10万円の売り上げを上げた営業マンでは、圧倒的に後者の営業マンが優秀です。

なぜなら、前者の営業マンは見積もりに行った10件のうち5件の引越しを決めたので決定率は50%です。

対して後者の営業マンは見積もりに行った5件の引越しすべてを決めてきたわけですから決定率は100%です。

引越し業者の営業マン見積もりの決定率は70%以上

また、営業マン個人の売り上げは地域性でも違ってきます。

都会なら一人の営業マンが1日に15件も訪問見積もりにいけますが、田舎のほうになれば引っ越しの数自体が少なくなるのと、物件から物件までの移動時間の関係もあって、1日に見積もりが出来るのは5~6件ということもあります。

しかし、全国に展開している引越し業者は、全国の営業所に点在している営業マンに成績をつけています。

引越し業者の営業マンの成績は決定率で決まります。

この決定率ですが全国展開している引越し業者の営業マンなら、85%くらいの決定率を誇ります。

この85%の決定率は、全国展開している引越し業者の1位にランキングされている引越し業者に限らず、2位から6位くらいまでの引越し業者も該当します。

相見積もりが当たり前とされ、競合ひしめく引越し業界の中、引越し業者の営業マンはそれほどの決定率を誇っているのです。

実際に全国に展開しているどの引越し業者の営業マンに成績となる「決定率」を聞いても70%以上だと回答します。

「それじゃ、他の引越し業者の仕事がなくなってしまうじゃないか」とか、「どう考えても数字が合わない」とお思いになるでしょう。

そのカラクリを説明します。

引越し業者の営業マンの成績は、決定率で決まる

引越しの見積もりの数は実際に見積もりに行った数

「引越しの見積もり件数」÷「引越し決定件数」×100で営業マン個人の決定率が計算されます。

ある引越し業者のAという営業マンの一日に密着してみます。

実際の話です。

営業マンAは引越しの見積もりに行く前日か当日の朝、見積もりに伺うユーザーの数を確認します。

その時点では営業マンAが持っている引越しの見積もりの予定は16件です。

でも、その日、営業マンAが実際に見積もりに入れたのは8件でした。

営業マンAは実際に見積もりに入れた8件のうち、7件の引越しを決めてきました。

7件のお客様は全て訪問見積もりの場での即決でした。

営業マンAの今日の成績は決定率87.5%です。

さすが営業マンA、すばらしい営業成績です。

すばらしい成績なんですが、ちょっと待ってください。

決定率87.5%は解かるのですが、朝、会社を出るときに営業マンAが持ち出した16件の引っ越しの見積もり予定物件から計算すれば50%の決定率になってしまいます。

では、営業マンAが見積もりにさえ入れなかった8件はどうなったのでしょうか。

答えは「もう他社で決めたので、見積もりをキャンセルします」と、見積もりを予定していたユーザーから引越し業者に電話が入っていたのです。

見積もり自体がキャンセルされてしまうと、営業マンAはユーザーのお宅に伺うことも出来ません。

引越し業者は営業マンが「実際にお宅を訪ねて見積もりをした数」だけを引っ越しの見積もり件数としてカウントしています。

引越し業者にとって見積もりに入る前にキャンセルされた見積もり依頼は、初めからなかったことと同じなのです。

見積もりの時には引越し当日までの話を熱く語ります

引越し業者にとっては引越しの見積もりは早く入った者勝ち

営業マンAのこの日の話を少し考えてみます。

引越し専業の引越し業者で全国展開している引越し業者は数社あります。

その数社に所属しているほとんどの営業マンの見積もりにおける決定率は80%以上を誇ります。

この日、営業マンAが関わった引越しの見積もり物件をユーザー目線で見ていきます。

営業マンAがこの日関わった引っ越しの見積もり物件は全部で16件。

そのうち、営業マンAが訪問見積もりに伺う前に、会社に電話で見積もり自体をキャンセルしてきたユーザーが8件。

この見積もりをキャンセルしてきた8件のお客様は、営業マンAより先に見積もりに入った他の引越し業者の訪問見積もりで即決したのです。

引越し業者の1営業マンが一日のうちに8件の訪問見積もりをすると7件ユーザーが即決している

営業マンAがこの日契約を取ってきた見積もり物件は7件。

営業マンAはこの7件の訪問見積もりにおいて、その場で即回答いただき、即決してもらうことに成功しました。

7件の引越しユーザーには荷造り用のダンボールも置いてきましたから、もうキャンセルは無いでしょう。

保留になってしまった見積もり案件が1件。

この保留になったユーザーは「あと数社に見積もりを依頼しているから」と即決することはできませんでした。

営業マンAは「他を断って即回答してくれたらこの金額で受けますよ」と、自社で出せる最安値を提示して食い下がったのですが、どうしても口説き落とせませんでした。

なんとなくそりの合わないユーザーだと、営業マンAも感じていましたから、仕方が無いと思いましたし、「こんなユーザーはこっちからお断りだ」とすねてしまった部分もあります。

「今、決めてくれたら、この割引料金で」と言ってしまったので、もう、割引前の引越し料金でしか仕事を引き受ける気もありません。

営業マンA、今日も一日お疲れ様でした。

保留になった見積もりでも出来る限り引越し料金を安くしたし、引越しのアドバイスもたくさんしたのに保留されたのは悔しいですが、明日もがんばりましょう。

複数の引越し業者から同じ時間帯に訪問見積りをしてもらうには

引っ越しの見積もりでダンボールを置いて帰ると、ほとんどキャンセルは無い

引越しの訪問見積もりではほとんどのユーザーが即決する

この話から何が見えたでしょうか。

この話に出てくる引越しの見積もりを依頼したユーザーの16件中15件が訪問見積もりのその場で「即回答」「即決」しているということです。

実際、引越しの見積もりを依頼したユーザーのほとんどが訪問見積もりの場で即決します。

引っ越しの見積もりを取るからと、身構えているはずのユーザーも引越し業者の営業マンの手に掛かれば、80%のお客がその場で即回答、引越し業者を即決してしまいます。

だから、引越し業者の営業マンは他の引越し業者よりも早く見積もりに呼ばれたいと思っています。

先に見積もりに入った他の引越し業者で即決されてしまうかもしれないからです。

訪問見積もりの時に即決することで発生するユーザーのメリットもちゃんとあります。

「即決してくれたら」という引越し料金は、本当にその場でしか提示しません。

他社から見積もりを取った後「やっぱり御社の即決価格でお願いします」と言っても、まったくの即決価格になることはありません。

引越し業者の営業マンのテクニック

引越し業者の営業マンは訪問見積もりでユーザーに即決してもらうために様々な誘導をかけてきます。

引越し業者の営業マンが訪問見積もりでユーザーに即決してもらうために即決価格として安い引越し料金を提示するのは既に知られていますが、引越し業者の営業マンは他にも誘導をかけてきます。

ユーザーに訪問見積もりが面倒だと思わせる

ユーザーがこの後にも他の引越し業者の訪問見積もりを呼んでいることを知った引越し業者の営業マンは訪問見積もりがいかに面倒なことかを訴えます。

訪問見積もりには時間がかかること、引越し業者を何社呼んでも対して引越し料金は変わらないことなどをユーザーにアピールして相見積もりになることを阻止しようとします。

その際、ユーザーに対して「自分の訪問見積もりだって面倒だったでしょ」と自虐的なこともアピールしてきます。

引越し業者の営業マンはあの手この手で他の引越し業者から訪問見積もりをしてもらうことが嫌になるように仕向けていくのです。

ユーザーに早く荷造りに取り掛かりたくさせる

引越し業者の営業マンは引越の荷造りがいかに大変かをユーザーにアピールします。

そして部屋の中にあるものの荷造り方法を説明しながらユーザーが荷造りするのに必要になるダンボールの数はいくつでどのくらい時間がかかるかを訴えてきます。

さらに今、引越し業者の営業マンがダンボールを持ってきていること、また、その量がユーザーが荷造りするのに必要充分なダンボールの数であることをアピールします。

割れ物を包む紙、食器氏の用意があることなどをユーザーに訴え、早く荷造りに取り掛かりたくなるよう仕向けていくのです。

引越しの相談 Q.引越し業者にキャンセルを申し出たらダンボール代12,000円をお支払いくださいと言われました

まとめ

  1. 引越し業者は完全反響営業なので営業マンの成績は決定率と決定件数が重要になります。

  2. 引越し業者の営業マン見積もりの決定率は70%以上を誇ります。

  3. 引越し業者にとって引越しの見積もりは早く入った者勝ちになっています。

  4. 引越しの訪問見積もりでは、ほとんどのユーザーが即決しています。

  5. 引越し業者の営業マンのテクニックとしては、ユーザーに訪問見積もりが面倒だと思わせる、ユーザーに早く荷造りに取り掛かりたくさせるなどがあります。